戦略コンサル急拡大におけるビジネスモデルの転換

戦略コンサルにはここ数年で急拡大したファームもある。
極端なファームだと、数年でコンサルタント数が倍になったところもある。


で、なぜこんなに急拡大をしたのか?


答えは、「ビジネスモデルを転換したから」である。



旧来の戦略コンサルのビジネスはこうだ。
・経営者に対して、戦略立案サービスを提供


しかし、当然のことだが、毎年同じ会社が戦略立案をしてくるということはありえない。
もしそうだとしたら、「前年に立案した戦略がすぐに見直さねばならない程度のものだった」ということになる。


だから、狩猟民族的に、次から次へと戦略立案サービスの提供先企業を探し歩くことになる。
とはいえ、戦略立案に億円単位のフィーを出せる企業はほんの一握りなので、いつまでたっても大きくはならない。



ということで、拡大のためのビジネスモデルはどうしたかというと、こうだ。
・部課長レベルの課題に対しても、課題解決サービスを提供


こうすると、課題の数は山ほどあるため、市場は大幅に拡大する。
そして、こういう循環でコンサルは企業に食い込んでいく。


・まずはディスカウントしても良いから、とにかく食い込む
・内部に入っていろいろと情報を得てしまえば、いくらでもプロジェクトを売る余地を発見できる
・普通の大企業の社員より、コンサルタントの方が(一般的には)スキルが高いため、良いアウトプットが出てくる
・とすると、部課長レベルは予算さえ許すならコンサルを使った方が楽をできる
・そうこうしているうちに、経営陣も、「社員よりコンサルの言うことを信じる」現象が起きる
・これまで社内で解決していたような小さい課題までコンサルを依頼するようになる(こういう状態を俗に“シャブ漬け”という)



・・ということなので、こうしたビジネスモデルへの転換にあたり、パートナーの評価基準も変わる。
(旧来)単純に売上 ⇒ (新方式)同一クライアントからの継続期間・受注数


昔は何社も抱えてなければ売上目標を達成できなかったのが、新方式になってからはコアクライアントを1社抱えていれば大丈夫になったそうだ。
パートナーとしては生きやすい時代と言えるかもしれない。



コンサルティングファームの成長戦略」としては全く正しいとは思うが、弊害もあるようだ。

要は、大きくなりすぎたということだが、こんな弊害が出ている。

・経営陣と直にやり取りをするのはパートナーだけになってしまい、プリンシパルレベルでも経営陣と話す力を持てなくなっている
・小さいイシューのプロジェクトが増え、「つまらない仕事」が増えている
・修羅場経験が減ったため、骨太なコンサルタントが育たなくなっている


つまるところ、だんだんコンサル会社も「普通の会社」に近づきつつあるということなのだろう。
「東大生の就職希望ランクの上位にくるようになったら終わり」みたいなことを言う人がいるが、そういう感じなのかもしれない。
「自らの直感を信じた変わった奴が、周囲の反対を押し切って入社する」ような就職先でなく、三菱商事MUFG電通とかと同じようないわゆるエスタブリッシュになりつつあるってことなんだろうな。