東電処理関連 〜まずは原理原則から考えるべし〜

何か迷走しているが、この手の話はまず「原理原則通りにやる」ってのが基本だろう。
「被災者救済!」という感情論は分かるが、規模が大きい話だけに原理原則を踏み外すと波及効果が大きい。


で、原理原則から考えると、大きく2パターンある。

<何も手を打たず、破産させる場合>

  • 支払不能な債務が発生
  • 破産処理に入る
  • 残余財産を債権額で按分して分配
  • 清算完了

この場合に「電力供給はどうなるんだ!」って話だが、破産管財人は会社の資産を換貨するわけだから、その段階でどこかの会社に東電の事業を譲渡して換貨することになる。
だから、別に電力供給が止まることはない。
多分他の電力会社が健全な事業部分だけ買うんだろうね。


【株主への分配】

  • この場合、株主には分配金はない。債務超過なんだから当然だわな。
  • もし事業譲渡の金額で債務を全額弁済できてしまう場合、余りは株主で分配となる。

【被災者への賠償】

  • 被災者への賠償は債権としてカウントされ、残余財産から按分して支払われる。
  • 問題は、賠償総額が固まらないと、分配比率が決まらないこと。したがって、被災者への賠償まで短くても1年はかかるだろう。

【金融機関への影響】

  • 東電が継続した方が有利か、破産処理した方が有利かを分析して考えることになる。
  • 事業の譲渡額、国から拠出される支援額、東電が継続する場合の追加融資額およびその条件等、複雑な検討が必要。

<法的整理を行う場合>

  • 支払不能な債務が発生
  • 法的整理を申し立て、債務支払をストップする
  • 再生計画を立てる
  • 再生計画を債権者会議で決議
  • 再生計画にて定められた割合で弁済を受け、その余は債務免除となる


ということで、債権者と株主の痛み負担割合は再生計画によるところとなる。
基本的には大幅な債権放棄になるんだろうから、債権者(主に金融機関)としては、株主も相応の痛みがないと再生計画を承認しない。
ということで、大規模なDESが行われ、東電が融資団の管理下の企業になるイメージだろう。

【株主への分配】

  • 大規模なDESにより、既存株主(金融機関以外の個人等)の持ち分比率はかなり小さくなる。
  • したがって、株式価値と配当がその分小さくなる。ほとんどゼロに近くなるイメージか?

【被災者への賠償】

  • 被災者への賠償は債権としてカウントされ、残余財産から按分して支払われる。
  • ここでも問題は、賠償総額が固まらないと、分配比率が決まらず、再生計画が作れない。したがって、被災者への賠償まで短くても1年はかかるだろう。

【金融機関への影響】

  • 東電が継続した方が有利か、破産処理した方が有利かは、再生計画による。
  • 破産する場合の事業の譲渡額、国から拠出される支援額、東電が継続する場合の追加融資額およびその条件等、複雑な検討が必要。

・・という大きく分けて2パターンある中で、原理原則を踏まえた上で、そこに国が追加的にどう絡むかを検討すべきだろう。
上記の原理原則が分かっていれば、いきなり政府に「債権放棄せよ!」といわれても、金融機関が答えようがないことが分かるだろう。
だって、金融機関としては、「貸した金がどれだけ戻ってくるか」が基準であり、破産させた方が得か、継続させた方が得かを考えねばならんわけだ。
(無条件に継続を前提に考えてしまうと、取締役の善管注意義務で訴えられかねない)


となると、金融機関としては、「賠償のスキームを東電と国が固めるのを待ち、その上で、どうすれば得かを考える」のが筋だ。
それまでは「貸した金は契約通りに返してください」というしかないわな。


ちなみに、東電の経営陣としても、「被災者様!申し訳ありません!すぐに払います!」とは言えない。
というのは、経営陣としては、「東電の責任分を可能な限り縮小せねばならない」という責任を株主に対して負っているからだ。
それをホイホイ払ってしまうと、株主から訴えられかねない。

となると、東電の経営陣としては、いくら世間に叩かれようと、被災者に土下座をしながらも、カネの面では「あれは国が賠償すべきものだ!」と言い続けねばならない。


・・ということで、正式な賠償にはどういう方法を取ろうが年単位の時間がかかる。
超法規的に一時金を出したりとかはあるだろうが、現実的には、厳しい話ではあるが、年単位の時間がかかることを前提として、進んで行くしかないと思う。